君なんかに優しくしたばっかりに





「よし、生クリームのところはマヨネーズにして、スポンジ部分はパンにしよう。トッピングの苺はやっぱりハムかなぁ。色合いとしてはもうちょっと赤いほうがいいんだけど、味の問題もあるし。で、パンとパンの間にはスクランブルエッグを挟もうと思ってるの。これならマヨネーズやパンとの相性もいいだろうし。どう、土方君」
「……とりあえず、いちおう、念のために聞くけど、なんだソレ」
「んもう、今更なに言ってるの! 土方君への誕生日ケーキに決まってるじゃない!!」
「今、お前が挙げてった食材には、ケーキの要素が全然見あたらねーと思うんだが、気のせいか」
「うん、だって土方君ってあんまりお菓子とか、甘いモノが得意じゃないでしょう。だから、バースデーケーキ土方スペシャルを考案中なのです」
「なのです、じゃねーよ。何考えてんだ」
「ただ、バースデーケーキ土方スペシャルは誰も味見ができないのが難点でね。味見っつーか、ここまでくるともはや毒味なんだけど、さすがに味を確かめずに土方君に食べてもらうのも気が引けるし」
「オイコラ、今どさくさに紛れて失礼なこと言ったろ。毒じゃねーだろ、マヨネーズは主食にもなり得る万能食材だぞ」
「マヨネーズは食材ではなくて調味料です。バースデーケーキ土方スペシャルは作るのは大して難しくないと思うんだけど、やっぱりバランスとか、細かい味の調整なんて食べてみないと分からないしね」
「マヨネーズは調味料ではなくて、もはや主食です。つーか、その食材で出来上がるもんって、ただのハム卵サンドだろ。バランスもクソもねーよ」
「さっすが土方君、なかなか鋭いねー。さすがに斬新すぎるのもどうかと思ってさ、スタンダードな材料を揃えてみました!」
「じゃあもう普通にハム卵サンド作ってくれよ」
「それじゃあ本末転倒でしょ! あくまで土方君の誕生日をお祝いするのが一番の目的なんだから、やっぱりケーキは必要不可欠です」
「そんな珍妙なケーキ作るくらいならサンドイッチで祝ってくれ。残らず全部食ってやるから」
「だめです。土方君にはマヨネーズケーキ、そして私にはショートケーキを買ってきて二人でお祝いするって決めているんです」
「それお前がケーキ食いてェだけだろ! 俺の誕生日に便乗してるだけじゃねーかァァ!!」
「便乗だなんて人聞きの悪い。土方君のお誕生日を口実にしてるだけだもん」
「それを便乗っつーんだよ」
「そこまで言うなら仕方ない、土方君はサンドイッチ、私はショートケーキで」
「何が悲しくてケーキ食ってる横でハム卵サンドを食わなきゃなんねーんだ。普通のケーキくらい食わせろ」
「……でも私、料理って言ってもお菓子作るのはあんまり得意じゃないし」
「どっかで買ってくりゃいいだろ」
「……お財布的にもあんまり余裕ないし」
「ケーキくらい奢ってやるから」
「まじでー! じゃあ駅前のケーキ屋さんに行こう! おいしいって評判で、ずっと気になってたんだよねー!!」
「……ていうか、お前、本当に俺を祝う気あったのか?」